Director's BOYAKing
12.My Music Life (その4)「第九」 (2001.1.21)
中1の秋ではなかったか、と思います。
友人宅にあったベートーヴェンの「第9交響曲」を貸してもらい、
初めて全曲を聴きました。
第1楽章と2楽章とがあまりに不思議な音楽だったので取り憑かれてしまいました。
その晩はその2つの楽章にうなされて、よく眠れませんでした。
夢の中で、オーケストラの映像とこの曲が鳴って、感極まって、
汗びっしょりで目が覚める。
何度寝直しても、このくり返しでした。悪夢のような。。。
それからしばらくの間、毎日のように「第九」を聴き、
やがてスコアも手に入れて、かなり細かい聴き方をすることになります。
演奏も、カラヤン、カール・ベーム、フルトヴェングラー・・・や、
テレビやラジオで聴けるあらゆる演奏に耳を傾け。。。
(これは何も「第九」に限ったことではないですが、特に「第九」には熱心だったということです)
聴けないときでも、スコアを読んで楽しんでいることが多かったので、
高校に入るころには、綴じてあるところが崩れてぼろぼろになりました。
高2のころに、マーラーの「大地の歌」や「復活」と出会うまで、
「第九」は至高の音楽でした。
今では、もう「第九」は積極的に聴きたい音楽ではなくなってしまいました。
若いときにあまりにも聴きすぎて、飽きてしまったのも一因ですが、
「年末には第九を」という、あの流行の影響も大きいと思います。
あの、いつ聴いてもすばらしいはずの作品を、
年末の風物にしてしまったあの流行は、実に迷惑で罪深いものです。
流行への反発から、「第九を歌う会」型の年末の演奏会には
めったに行かないのですが、時に誘われて行ってみると、
第3楽章までをとにかく大急ぎで片づけて、
観客が眠ったりうんざりしたりしない内に合唱に入ろうというような、
そんな意図を感じさせる演奏が多くて、ますますおもしろくない。。。
第3楽章の「天上の音楽」だけを、今でも時々聴くことがあります。
できるだけゆっくりしたテンポで、じっくり聴かせてくれる演奏で。。。
実に美しいヒーリングミュージックのひとつです。
ベートーヴェンの音楽について言えば、今では、 若いときに飽きるほどには聴きすぎなかった「英雄」交響曲とか ピアノ協奏曲の方が好きと言えそうです。
「年末第九」(日曜大工に似た熟語ですね。。。)のころになると、
「いい加減、バカの一つ覚えみたいに第九ばっかり歌っとらんと、『復活』や『マタイ受難曲』でもやったら・・・?」
と思ったりしますが、いやいや、禁物禁物。
「第九」の悲劇は、もう他の音楽に演じさせてはいけません。